作品のできるまで - 不動明王の制作過程

先ず不動明王の生い立ち、由来、役割など、書物を調べる。約半年勉強すればするほど、仕掛が怖くなったが、思い切って始めた。知識人の方々の有り難い指導が心の支えとなった。
【不動明王とは】
不動明王 (ふどうみょうおう)、梵名アチャラ・ナータ (अचलनाथ [acala naatha])は、仏教の信仰対象であり、密教特有の尊格である明王の一尊。また、五大明王の中心となる明王でもある。
以下、「不動の怒り」から抜粋
「不動明王如来使者を描け。右に剣を持ち左に羂索を持つ。頂きには莎髻あり、屈髪左肩にあり。細く左目を閉じ、下歯をもって右辺上舌をかみ、その左辺下唇は稍翻出する。額に碑文あり、それは水波の状のようだ。石上に座り、その身は卑しくて、充満肥満で・・・

写真は不動明王の下図です。不動明王は小太りのイメージですが、迫力を出したいと思い、今回は筋肉隆々で怒りを強調した感じにした。

まずは、イメージを固めるために、木で骨組みを制作する。
粘土細工の骨組みを作るには①のように実物大の正確な図面を描き、それにより正面、横面、上面からの骨を組み立てる。

粘土を骨に貼り付けて形を作る。この段階で何度も自分の納得のいくまで形を整える。
回数にすると50から100回程度の修正になった。

粘土細工の完成型である。

粘土細工の原型をもう一度忠実に図面に描き、それを欅材料に写す。(正面、横面、上面)

電気ドリル、チェンソーなどでおおまかな形を出す。次に叩きのみ等で粗彫りをする。

粗彫りで大まかな形が出来たら、次にのみの種類を多くして小彫りをする。
作業中、上からのみを叩きおろすため、下に力が加わり、下面が壊れる恐れがあるので、その部分はあらかじめ彫らないで材料の状態にして最後の方で取り除く(ツナギ)。

粗彫りで大まかな形が出来たら、次にのみの種類を多くして小彫りをする。
作業中、上からのみを叩きおろすため、下に力が加わり、下面が壊れる恐れがあるので、その部分はあらかじめ彫らないで材料の状態にして最後の方で取り除く(ツナギ)。

小彫りがほぼ終了した。ツナギは合計10カ所ぐらいになるが、徐々に取り除く。
この写真では、三カ所ぐらい残っているが、形が満足できれば全部取り外す。

薄い刀の仕上げのみで凹凸の無いように綺麗に仕上げる。 なるべく逆目にならないように、今回欅材ですので、綺麗に仕上げれば自然と光沢がでます。また、写真の木目模様も綺麗にでました。

仕上げの作業。

光背の火炎を作り台座も制作した。

本体が仕上がった。玉眼には百毫(水晶)を埋め込んだ。

本体の下面にはエネルギーを保つ空洞を施し、胎内仏を入れるように細工をした。